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幻冬舎ルネッサンスとのトラブル事例

 Dさんは2009年10月に幻冬舎ルネッサンスと出版契約を交わし、約250万円の制作費を2回に分けて支払いました。また、契約直後からブログを始め、制作の様子や担当者とのやりとりなど、折に触れブログに書いていました。編集に際し不満に思ったことは、編集者がイラストレーターに誤った発注をしてイメージと異なるイラストになり、文章の修正を求められたことです。

 2010年2月に、本の校了を認める印鑑を押しに来てほしいと言われて会社に行った際、「ドラマ化できる作品」「次回は商業出版で」「誰も描いたことのない作品」などと言って持ちあげられました。

 2010年4月、刊行直後に本の売り方などについて質問したのですが、担当者からは冷たい事務的な返事しかなく、この頃から信頼できなくなっていきました。11月になるとネット書店に本が配本されなくなったために担当者に聞くと、新刊ではなくなるため書店にあまり流通しなくなるとの説明がありましたが、契約時にはそのような説明はありませんでした。

 その後、幻冬舎ルネッサンスのHPに掲載されている「著者たちのその後」というコーナーについて批判的な感想をブログに書いたところ、ブログが炎上しました。これを契機に自費出版社の問題点などについて発言し、担当者に疑問について答えてほしいと依頼したところ、「社内で検討して、年明けにお返事します」とのことでした。

 翌年早々、「Dさんの作品を社内で検討しましたところ、大変面白いので販売にも、今後いっそう力を入れていくことになりました。実は以前から検討してはいたのですが、著者さんを期待させてはいけないので、今まで黙っていました」との電話があり、疑惑の追及は沈静化。次の作品へ意欲を燃やすようになり、本として刊行した作品をウェブ掲載する方向で続編の執筆にとりかかりました。4月に、担当者には、もう二度とやりとりをしないと連絡をしました。

 ところが、担当者から「幻冬舎ルネッサンスで本を出した著者さんの悪口をブログに書いている」という全く身に覚えのないクレームが電話であり、担当者に問い詰めると、原稿を読まずに持ちあげていたことを認めました。このようなことがあり、この会社の問題点を知らせるべくブログに詳細を綴りはじめました。

 その後、会社を訪問したところ「Dさんのことは弁護士に一任してあります。お引き取りください」と言って威圧され、月末には法律事務所からブログの即時削除を求める内容証明郵便が届きました。そこには、これ以上誹謗中傷を書くと刑事事件として訴えるとの記述もありました。Dさんはその内容証明郵便をスキャニングしてブログに画像として貼り付けて、読者に説明しました。

 しかし、脅しや内容証明によって情緒不安定になり、5月はじめにブログを削除してしまいました。そして、新たにブログを立ち上げて、事実を淡々と書き始めたところ、再度、ブログを削除するようにとの内容証明郵便が届き、書籍の流通ストップと契約の解除まで言い渡されました。

 そこで、内容証明郵便を送った法律事務所に電話すると、「誰にもぜったいに秘密に、そして、すでに書かれたブログ記事をすべて消すことを前提に、社長と担当者がもう一度Dさんに会うと言っている。Dさんの小説も読むと言っている。その際、ちょっとした書類に署名捺印してもらいたい」と言われ、ブログの関係記事を削除し、6月に法律事務所に行き社長と担当者に会いました。

 本の編集データを弁護士から返してもらい、残りの本の処分について話そうと思っていたところ、弁護士から二度とブログに書かないこと、さらに幻冬舎ルネッサンスのことを他言しない旨を記した誓約書に署名するよう求められました。あまりにも不当な内容であったため慌てて会議室を出ると、弁護士がエレベーターまで追いかけてきて、エレベーターの「開」ボタンを押さえてしまったため、弁護士の体をすりぬけて非常階段から走って逃げ帰りました。そして、同日よりブログを再開しました。

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【当会の見解】

 Dさんの事例でもっとも問題と思われるのは、ブログの削除要請に関する対応です。もし会社や担当者に対する誹謗中傷があったのであれば、該当部分の修正や削除を求めるなど話し合いでかなり解決できることと思いますが、そのような話し合いもせず、著者からの疑問に答えようともせずにブログの削除を求める内容証明郵便を出したり刑事告発を示唆することは、著者に対する恫喝です。表現の自由を尊重すべき出版社としてあるまじき行為です。

 なお、公益を図ることを目的に、公共の利害に関する事実を摘示する場合は、たとえ社会的評価を低下させる内容であっても名誉毀損は認められないことになっています。

 また、法律事務所に呼び出して会社側に有利な誓約書に署名を迫る行為も脅迫的であり、弁護士の行為は弁護士の職務基本規定に抵触するものと考えます。

 契約に当たっても、販売について十分な説明がなされたとは思われませんし、トラブルとなった際の説明責任も問われます。

 なお、幻冬舎ルネッサンスの出版契約は「出版社に出版権を設定して出版社に所有権のある書籍をつくり、著者には売上金ではなく印税(著作権使用料)を支払う」タイプであり、出版社に一方的に有利になっている上、著者の負担する費用が不明瞭であるという問題があります。
# by nakusukai | 2011-07-13 15:28 | 事例紹介

消費者庁が特定商取引法違反で自費出版業者を指示処分

 消費者庁は、短歌等の作品を書籍に掲載するなどのサービスを提供していた株式会社アートコミュニケーションに、特定商取引法違反であるとして業務の改善を指示しました。以下は朝日新聞の記事です。

作品ほめて掲載勧誘、出版社に業務改善指示 消費者庁(朝日新聞)

 以下が消費者庁の公表資料です。

平成23年6月17日 電話勧誘販売業者【(株)アートコミュニケーション】に対する指示処分について(PDF)

 本件の概要と違反行為は以下のとおりです。

1.株式会社アートコミュニケーション(以下「同社」という。)は、全国の図書館から氏名、住所、電話番号などの情報が記載された作品集を収集するなどして、そこから得た情報に基づき消費者宅に電話をかけ、同社が発行する書籍である「Mahoroba(まほろば)」、「Lifework(ライフワーク)」などへの俳句、短歌等の作品の有料掲載、あるいは、作品展における俳句、短歌等の有料展示サービスについて、電話勧誘販売(有料役務提供)を行っていました。

2.認定した違反行為は以下のとおりです。
(1)同社は、消費者が「値段(書籍への掲載料)が高いので、できません。」と断っているにもかかわらず、「宣伝のために説明させてもらいます。」と言って話を続けたり、「(同社に対して一旦考えておくと伝えた後、断りたいと言う意味で)やめるから。」と申し入れをしたにもかかわらず、「入会すると言ったではないか。」と言って、申し入れを受け入れず勧誘を続けるなど、契約の締結をしない旨の意思を表示している消費者に対し、引き続き勧誘を行っていました。
(2)同社は、消費者が明確に断って電話を切った後に、ごく短い間に立て続けに4、5回もの電話をかけて勧誘を続けたり、あるいは、10日くらいの間にわたり、毎日のように消費者に対し電話をかけて勧誘を続けるなど、消費者が迷惑を覚えるような執ような勧誘を行っていました。

 この指示処分によって、消費者庁は特定商取引法が自費出版に適用されることを認めたといえます。本件に関する相談は消費者庁から権限委任を受けて特定商取引法を担当している経済産業局の消費者相談室で承るとのことです。電話などで執拗に自費出版を勧誘する行為があった場合は、以下に相談されることをお勧めします。

北海道経済産業局消費者相談室       011-709-1785
東北経済産業局消費者相談室         022-261-3011
関東経済産業局消費者相談室         048-601-1239
中部経済産業局消費者相談室         052-951-2836
近畿経済産業局消費者相談室         06-6966-6028
中国経済産業局消費者相談室         082-224-5673
四国経済産業局消費者相談室         087-811-8527
九州経済産業局消費者相談室         092-482-5458
沖縄総合事務局経済産業部消費者相談室 098-862-4373
# by nakusukai | 2011-06-27 12:40 | お知らせ

印税と販売に注意


 しばらく更新していませんでしたが、自費出版での被害が減少したり悪質な商法がなくなったというわけではありません。

 いわゆる印税タイプは相変わらずいくつかの出版社で行われています。つまり出版社に所有権がある本をつくり、本の売上金も出版社のものとなり、著者にはわずかな印税を支払うという出版権設定契約を締結させ、出版費用の全額を著者に請求する方式です。出版費用の全額を支払っていながら、本も売上金も出版社のものになるというのはおかしいと思いませんか? これは出版社に一方的に有利な契約といえますので、ご注意ください。名前が知られた出版社であっても、印税タイプをとっているところがあります。

 「本が売れるかどうかはわからない」「著者が損をする可能性が大きい」と説明しておきながら、書店流通を勧める出版社もあります。「売れない」といっておきながら、販売を勧めるのは矛盾しています。良心的な自費出版社であれば、売れる可能性の少ない本であると判断したら無闇に販売を勧めることはしないでしょう。無名の著者の書いた自費出版の本は、流通させるだけ、あるいは特定の書店に一時的に並べるだけではほとんど売れません。売れる可能性が低いのであれば、販売分を含めた大部数を出版しても余分なお金がかかるだけではなく売れ残った本の処理が大変になるだけです。せっかく大枚をはたいて出版しても、断裁処分ということになりかねません。売上金を支払うというタイプでも売れなければ同じであり、持ち出し(マイナス)になることもあります。著者の「書店で売りたい」「もしかしたらヒットするかも知れない」「作家への一歩になるかもしれない」という気持ちを巧み利用し、自費出版で成功した作家の事例を持ち出して契約を勧める会社がありますが、自費出版をきっかけに作家への道が開けることはきわめて稀です。

 出版してから、オプションの宣伝や書店陳列を勧めて高額な費用を請求する場合もあるようです。販売のために高額な費用を出しても、それで売れるということはほとんどありません。

気をつけよう 販売・流通 印税の罠
# by nakusukai | 2011-01-28 14:11 | 情報コーナー

文芸社とのトラブル事例

 Cさんは3年前、文芸社の営業マンから「良い作品は共同出版で、中身のない作品は自費出版しかありませんが、会議であなたの作品は、自費出版でなく共同出版に決まりました。大変評価が高いですよ」と電話があり、「200万円くらいかかりますが相場です。でもよい作品はテレビドラマや、全額返金もあります」と説明され契約をしました。

 契約をしたら、契約前後は度々あった電話やメールがピタリと止まりました。本が出版される頃になって、「直接本屋さんに営業に行ったり、本が置かれているかどうかを確かめたりしなで下さい」などと書かれた文書が届き不審に思っていたところ、友人から、一部の書店では棚に置かれていたが、一部の書店では目立たない隅の棚やレジの下にあったと聞かされ愕然としました。

 この事に「だから自分で本屋さんを調べたり行ったりしないでくれと言うことだったのか」と抗議すると、「まだ書店が並べる前だったのでしょう」とか、「注文された本は棚に並びませんから」と言う答えでした。

 出版から2年が経過したところで、8万円近くの倉庫使用料の知らせが届いたため驚いて倉庫料金についての資料を読みかえすと、2年目から在庫冊数に応じて月額の倉庫使用料が発生しており、書かれていた表には一見、一年分と勘違いするような一万円以下の月単位の倉庫料が書かれていました。

 また、契約前は共同出版という説明でしたが、契約書に書かれていた売上還元タイプのことを専門家に尋ねて、違う意味であることを知りました。出版、委託販売、全ての費用が作者持ちで、自費出版と変わらないこと、印税タイプなら倉庫代は会社持ちだけど還元タイプは倉庫代まで払うことを知りました。おまけにインターネットで調べて自費出版の相場より倍くらい高いことを知りました。

 文芸社に「出版費用の半額を返せば倉庫代は払う」と抗議のメールをしたところ、「何を根拠に半分返せといわれているのかわからない。倉庫代は書類に書かれており契約に違反しているのはあなたです。払う意思がないのなら、手続きに入らせてもらいます」と裁判手続きにも取れるような返信がありました。実際に文芸社は裁判を起こしていることもサイトで知りました。

 またインターネットで調べたところ、文芸社は提携書店に専用の棚を有料で借りていて売れ残った本を買い取っているということも知りました。この点について質問すると、以下のような返事がありました。

 「買取が事実かどうかということが、著者の方にどういう理由でどのよう不利益が生じるのか是非お聞かせください。つまり買い取りをしているかどうかを回答する以前の問題です。」

 質問の答えにもならないような回答が返ってきました。買い取りにかかる費用は著者が支払った出版費用に含まれていると考えられるし、有名書店であなたの本が売られますと勧誘していたのが実は、買い取りをするから書店は文芸社の本を置いていたとなると、著者たちは文芸社を信じません。勧誘時に売れ残りの本を買い取るシステムを知っていたなら、契約などしませんでした。また買い取りシステムであることを契約前に知らせず、買い戻した本を「返品」と称しているなら、著者にとって不利益となる事実を隠して契約させたことになります。

 しかし、文芸社は都合の悪い質問には開き直り倉庫代を主張します。勧誘内容と契約が違う事や、精算書に書かれた書店からの返品数が実際に書店に並んだ数より多い事や、買い取りの質問を何度もしましたが納得のいく回答は得られませんでした。協議した結果、1年分の倉庫料金を支払い、それ以降もかかっていた四ヶ月分の倉庫料金は支払わないということで合意しました。

 送られてきた「合意書」には、「甲と乙は、本件合意後、相互にまたは第三者に対し一切異議等を申し立てないものとする」という、メールで約束していない項目までありました。口止めをするかのような項目があることに対して抗議すると、文芸社からはいつになく謝罪の言葉とともに「集団訴訟や書き込みを止めさせる意味ではありません。解除の契約を後になり取り消すなどないよう処分した本を返却希望されないため書いています」との返事がありました。そこで、合意していない項目に取り消し線を引いて返送しました。

 本を出すという夢を叶えたい人達は、甘い勧誘言葉や契約書の中の専門用語に気を付けて、相場を調べてから後々トラブルや不快な思いをしないよう出版を検討していただきたいと思います。

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 「共同出版に選ばれた」と伝えながら、売上還元タイプの契約書を送付し、「印税タイプ」と「売上還元タイプ」の説明をせずに「売上還元タイプ」の契約書を送るなど、契約に際して著者を錯誤させており、大きな問題点があります。また、文芸社の作成した合意書には、裁判を起こしたり第三者機関に情報提供をしないよう求める項目があり、トラブルを隠そうとする意図が伺えます。

 合意が成立して解約をする場合は、合意書の内容をよく読んで理解し、合意していない項目があれば削除や訂正を求めるべきです。
# by nakusukai | 2010-02-07 12:03 | 事例紹介

倉庫料金に注意

 文芸社の流通出版には「印税タイプ」と「売上還元タイプ」があります。「売上還元タイプ」は制作費用や販売費用は著者負担ですが、売れた本の本体価格の60%が著者に支払われるというシステムです。本の所有権が著者にあり印税ではなく手数料を差し引いた売上金が支払われますので、「印税タイプ」より著者への支払いが多いのですが、2年目からは月額の倉庫使用料がかかりますので注意が必要です。

 一般に、初版が発売された年は友人や知人などによる注文などによってある程度は売れますし、1年目は倉庫使用料がかからないので著者にはある程度の売上金が支払われます。しかし、2年目からは在庫の冊数に応じて月額の倉庫使用料がかかり、売上還元金の精算と合わせて一年分の倉庫料金がまとめて請求されます。月額倉庫料金は千円単位であっても在庫数が多いと年額ではかなりの金額になります。例えば、在庫部数が700冊の場合は、税込の月額倉庫料金は7,350円となり、年額では88,200円にもなります。多くの場合、2年目以降は本の販売数が大きく減りますので、倉庫費用ばかりがかさむということになりかねません。つまり、2年目以降は本が売れなければ万単位のマイナスになる可能性が高いということです。

 自費出版の本はあまり売れない場合が大半です。1000部もの本をつくっても、それほど売れなければ倉庫料金がかさみむだけではなく、せっかく大金をかけてつくった本を処分しなければならなくなります。自費出版を考えている方は、書店販売すべきかどうか、適切な部数は何部くらいなのかをよく考えて判断してください。
# by nakusukai | 2010-01-28 09:13 | 情報コーナー