Q アマチュアの方から原稿を募集している出版社がありますが、素人の書いた本が書店で売れるのでしょうか?
A 一般的には無名の方の書いた原稿をそのまま本にしただけでは、ほとんど売れないといえるでしょう。無名の著者の本はふつう商業出版では採算がとれないということです。それを知りながら流通を売りにし、悪質な商行為を行っている共同出版社・自費出版社があります。安易に販売を勧める出版社は要注意です。 しかし、だからといってアマチュアの書いた本は必ずしも販売すべきではないとも考えません。アマチュアの方の本でも優れた内容の本は多数ありますし、稀にベストセラーになることもあります。話題性があったりレベルが高い作品であれば、商業出版できる可能性もあります。作品の内容・ジャンルによって得意とする出版社をあたってみるのも一つの方法です。 また、純粋な自費出版であっても、質の高い編集や効果的な宣伝などによって、そこそこの部数を販売できることもあります。ただし、ごく個人的な内容のものや売れないジャンルなど、書店販売に向かない本もあります。 アマチュアの方が書店への流通を希望するのであれば、以下の要件を満たすことが大切だと考えます。 1.ある程度以上のレベルであり、読者を意識して書かれていること。 2.質の高い編集や装丁によって、商品となるレベルに高めてもらえる制作サービス会社であること(出版社が費用・リスクを負う出版形態であれば、これは当然のことです)。 3.優れた内容の本であっても必ず売れるというわけではないので、過剰な期待はしないこと。 Q 流通を謳っている制作サービス会社に販売を委託したのですが、書店を見て歩いてもどこにも置いてありません。本当に流通させてくれたのでしょうか。 A 書店流通には大きく分けて二つのルートがあります。ひとつは新刊が出版されたときに取次(本の問屋)が全国の書店に配本する委託配本と呼ばれるものです。商業出版される本の大半は、このような流通方法をとっていて、出版社は発売に合わせて宣伝をします。しかし、素人の書いた自費出版本は、内容・装丁ともに商品として完成されている本でなければ委託配本で扱ってもらうことは困難です。書店側でも、売れそうにないと思った本は、棚にも置かずに返品してしまうことがあります。委託販売を扱っている制作サービス会社や共同出版社もありますが、編集や販売の方針、販売実績などを確認してみてください。 もうひとつは、書店から注文があると取次を通じて配本するという方法です。この場合は注文がなければ書店には置かれません。書店に注文してもらえるように働きかけをするなど、積極的に宣伝しなければ書店に置かれないので注意しましょう。 また、インターネット書店での流通のみに対応している出版社もあるようです。 どのような流通方法をとっているのか、契約前に詳しく説明してもらいましょう。 Q 全国に提携書店があり、一定期間、必ず本が並ぶと説明されました。確実に並ぶのであれば委託販売より優れた方法だと思うのですが。 A 提携書店に出版社専用の棚を有料で借りている場合があり「棚借り」「棚買い」などと呼ばれています。しかし、書店に置かれれば売れるということではありません。売れ残った本を版元(出版社)が買い取っている場合もあり、お金の力で書店に置いているともいえます。また、提携書店に専用の棚を確保している場合、ジャンル別の棚に本が置かれるのではなく、同時期に出版された本がまとめて置かれることになります。目的をもってジャンル別の棚に本を探しにきている読者の目には、ほとんど触れないといえるでしょう。 なお、共同出版(本の所有権も出版権も出版社にある契約)の場合、提携書店に並べたり買い取るための費用は出版社の負担なのか、著者の負担なのか確認し、納得したうえで契約しましょう。また、売れ残った本を出版社が買い取っている場合、買い取った本がどのように扱われるのか、著者に報告している実売部数から除かれているのか確認してください。 Q 詩集を出版したいのですが、書店では詩集はあまり見かけません。売れるかどうか心配です。 A 詩集や短歌集、句集などは販売の難しいジャンルといえます。内容が優れていても多数を売るのは困難です。また、無名の方の小説や絵本などもそう簡単には売れません。どうしても販売を望むのであれば、販売が難しいことを理解したうえで、売れ残るリスクを考えて部数を決めるべきでしょう。品質にやや難点がありますが、必要な部数だけを制作するオンデマンド出版もひとつの選択肢です(大部数の場合は割高になります)。 販売の難しいジャンルの本に販売前提の出版形態を強く勧め、大部数を提案する出版社は、ほとんど売れないことを承知のうえで顧客獲得のために販売を謳って勧誘している可能性が高いといえます。 Q 書店に流通してもらう以外に、売る方法はありますか? A 著者が自分で売るという方法もあります。著者がお願いすることで、居住地の近くの書店やお店に置いてもらえる場合もあります。地域性のある内容の本であれば、全国販売より地元の書店で販売するほうが効果的でしょう。著者自身がホームページやブログなどで宣伝し、自分で発送して売ることもできます。また電子書籍という形態もあります。趣味に関る本であれば、同じ趣味の団体などで紹介してもらえるかもしれません。いずれにしても、黙っていては売れません。地元の新聞で紹介されたり、書評で取り上げてもらうなど、多くの人に知ってもらえなければ簡単には売れないと思ってください。なお、自分で販売するだけならISBNコードを取得する必然性はありません。 *当会では、勧誘された経験談、出版して疑問に思ったこと、失敗談などを募集しています。これから出版を考えている方が悪質商法に惑わされず納得できる出版をするために、ぜひ情報をお寄せください。当会のメールアドレス nakusukai@excite.co.jp
by nakusukai
| 2008-09-11 13:00
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