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新聞社への質問書


 朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、産経新聞社、日本経済新聞社および北海道新聞社に以下の質問書を送付しました。

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                                        2008年7月21日
     新聞社
代表取締役社長        様

                            共同出版・自費出版の被害をなくす会
                                     代表 松田まゆみ

       共同出版を行っている出版社の広告掲載についての質問書

 当会は、共同出版・協力出版などと称する悪質な出版商法の被害をなくすことを目的に活動しているNGOです。
 昨年は共同出版最大手の新風舎が著者らに提訴され、詐欺的な商法としてクローズアップされましたが、悪質商法への批判と放漫経営によって今年1月に破綻し、同様の出版形態を続けている文芸社に一部の事業が譲渡されました。
 新風舎と同様の商法を行ってきた碧天舎は2006年に倒産しており、かねてから批判されていた共同出版社の大手である文芸社、新風舎、碧天舎のうち2社もが破綻するという事態に至りました。ほかにも同様の商行為をおこなっている出版社は多数あるものと推測されます。
 インターネットなどではかねてから共同出版が批判されていましたが、大手新聞社はこのような出版形態の本質的な問題点をほとんど報道することなく、これらの出版社の原稿募集の広告を掲載し続けてきました。碧天舎や新風舎の被害者の中には大新聞が広告を掲載していることで安心して契約をした方も少なくありません。また、文芸社をはじめとした同業者の広告は今でも掲載されています。
 そこで、悪質な商法を行っている出版社の広告を掲載してきた大手新聞社に、この商法の問題点をご理解いただくとともに、広告を掲載してきたメディアとしての見解をお聞かせいただきたく、以下の質問をさせていただきます。お忙しいところ恐縮ですが、8月20日までに書面にてご回答くださいますようお願い申し上げます。
 なお、この質問書は公開とし、回答は当会のサイトhttp://nakusukai.excite.co.jpに掲載させていただきますことを申し添えます。

                         記

 はじめに、当会が問題としている商行為について説明させていただきます。
 本の出版形態は、著作者を顧客とする自費出版と購読者を顧客とする商業出版に大別されます。
 従来から行われてきた自費出版は、著作権者が制作サービス会社(出版社)に本の制作や販売を請負ってもらうサービス事業を指していました。すなわち著作権者自身が事業主体となって自費で本を制作する出版形態です。以前は制作サービスのみ行う業態が主流でしたが、昨今では販売サービスを付加している会社も少なくありません。すなわち制作サービス会社が手数料をとって著者の本を流通させ、著者に売上金を支払います。自費出版では制作サービス会社の顧客は著者であり、本を購入する読者は著者の顧客という位置づけになります。
 これに対し、商業出版とは出版社が販売を目的に自社の商品として本を制作・流通させる業態です。この場合、本来著作権者がもっている出版権(複製と頒布の権利)を一時的に出版社が独占し、その見返りに著者に印税(著作権使用料)を支払う契約を交わします(著者に所有権のある本をつくり流通させるサービスの契約ではありません)。出版社が主体の出版事業であり、出版社の顧客は本を購入する読者であることが前提の契約です。近年では出版社のリスクを軽減させるために、著者に出版費用の負担を求める場合も少なくないようです。
 当会が問題としているのは、後者のように、著者に費用負担を求めたうえで商業出版と同様の契約を提案する出版形態のうち、実際の出版費用を上回る金額を著者に請求している場合です。共同出版・協力出版などという呼称でアマチュアの著者から原稿を募集し、大半の本がほとんど売れないことを承知で作品を高く評価するなどし、出版社に一方的に有利な契約に誘引するものです。共同出版への批判が高まるとともに流通出版・自費出版など名称を変えてきた出版社もあります。
 この商法の最大の問題点は、著者に請求している費用が実際の出版費用を上回っていて著者を顧客にしている点です。倒産した碧天舎や新風舎では著者の負担金は「制作費」とされていましたが、制作原価をはるかに上回る費用を請求し、本が一冊も売れなくても利益が得られるシステムになっていたといわれています。新風舎の事業譲渡先である文芸社にも同様の疑惑が持たれています(文芸社は著者に請求している費用が原価ではないことを認めています)。
 つまり、出版社は自社の商品の制作・販売にあたり費用もリスクも負担しないばかりか著者から利益まで得、本の売上金も得ていると考えられる商法です。これは出版社に一方的に有利できわめて不公正な取引といえます。本の売上金によって利益を得ることを前提とした出版権の設定契約でありながら、実態は著者と購読者の双方を顧客としているなら、契約内容と実態に乖離が生じています。初版制作費を著者に負担してもらい、販売や保管経費は出版社持ちとしながら実費以上の制作費を請求しているのであれば不当な請求といえます。
 多くの出版社は出版のことがよくわからない著者に、商業出版と自費出版の契約形態の違いを説明せず、制作費の算出根拠も明確にしていないようです。アマチュアの本の大半は書店に並べてもほとんど売れません。そのような事実を十分承知のうえで作品を高く評価して著者に期待を持たせ、大半の応募者を出版社に有利な出版形態に導くという商法です。

 以上をご理解いただいたうえで、以下の質問にお答えくださいますよう、お願い申し上げます。

1.前述したような共同出版の本質的な問題点について、貴社はどのような理解をしていたでしょうか?

2.前述した商行為は悪質と考えられますが、貴社の見解をお聞かせください。なお、文芸社は当会が2回にわたり送付した質問書を無視しており、当会が提示した疑問や疑惑は何ら解明されていません。

3.貴社は広告を掲載する際に審査基準を設けていると思いますが、悪質商法の広告掲載についてどのような基準を設けどのような判断をしているのか説明してください。

4.最大手であった新風舎が倒産し多くの被害者が出ました。以前から共同出版への批判がありながら新聞社はその本質的な問題点をほとんど報道することなく、新風舎の原稿募集の広告を掲載していました。これについて見解をお聞かせください。

5.新風舎の倒産後も同様の商行為を行っている文芸社の広告を掲載されていますが、今後、このような出版社の広告掲載について検討していく考えがありますか。
by nakusukai | 2008-07-23 10:07 | 質問書と回答
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