「資料から見る自費出版ブームの裏側」

 ここ数年、「本が売れない」「雑誌が売れない」と言われ続け、出版業界は不況にあえいでいる。それにもかわらず、新刊本の点数だけは減ることなく、着実に増え続けている。
 出版ニュース社発行の2007年版出版年鑑によると、200年の新刊点数が、65065点だったものが、2006年には80618点になっている。新刊点数だけは、不況の波をうけずに伸び続けている。これは著者が、制作費などを負担する自費出版形態の本の増加によるところが大きい。
 ここ数年の出版社別の新刊点数をみても、自費出版本の躍進ぶりがよくわかる。
 2004年には1位講談社2191点、2位新風舎1847点、3位学研1146点であったものが、2005年には順位が入れかわり、1位は新風舎で2719点、2位は講談社2099点、3位文芸社1575点になっている。そして、2006年も順位は変わらず、1位新風舎が2788点、2位は講談社2013点、3位は文芸社1468点になっている。大手出版社の講談社を、自費出版会社が、挟み込む形でランキング上位に居座り続けている。
 またもうひとつ、自費出版業界が興隆している現象として、法人申告所得における文芸社の前年比率の伸び率があげられる。
 2005年の文芸社の法人所得は前年より501.7%の伸びを示し、3億35百万円である。(2006年は38.1%減って、法人所得は2億8百万円である)これは、アシェット婦人画社の1480.9%、角川春樹事務所684.9%についで、3番目の高い伸び率になっている。しかし、これはあくまでも法人所得の全体的な数字であるので、一概にこの伸び率すべてが、自費出版本の売上げによるものとはいえないかもしれない。だが、少なからずその影響は大きいとみてよいだろう。
 これら種々の資料からわかるように、今は空前の自費出版ブームである。出版各社ともこれに乗らない手はないとばかり、自費出版事業を展開している。
 たとえば、大手出版社の幻冬舎では「幻冬舎ルネッサンス」という自費出版会社を創設している。そのほかにも、ここ数年で多数の新興の自費出版会社が生まれるなど、自費出版業界は群雄割拠の様相を呈している。
 こうした自費出版事業の急成長のウラで、確実にトラブルは増え続けている。それは、先ほども述べたような書籍の制作から流通過程の見えにくさや、著者への契約時の説明不足などが原因になっていると考えられる。
 こうした状況をうけ、一部の業界団体では、こうしたトラブルをなくそうとする動きを見せているが、いまだ充分な機能を発揮しているとはいえない。なぜなら、自費出版の新刊点数が多い会社が、この問題に対してなんらの危機感を抱かず、有効な方策を打ち出していないからである。
 そこで次回は、ここ数年で実際にこの自費業界でどんなトラブルが起こっているのか。入手した資料から、その実状を探ってみたいと思う。

参考資料
「出版年鑑2005」「出版年鑑2006」「出版年鑑2007」(いずれも出版ニュース社)
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by nakusukai | 2007-08-19 09:04 | 情報コーナー
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